ポケットのなかは暗くて、帽子がみつからない RSSフィード

死体 性病は偽装している。まるで生きているかのように。
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2007-07-21

世界をはんぶんこした獣 03:24 世界をはんぶんこした獣 - ポケットのなかは暗くて、帽子がみつからない を含むブックマーク


「よくぞ此処まで来たな……」


来てしまったんだね。さて、僕らはふるまわなくちゃいけない。望まれるとおりに、ふるまわなくちゃいけない。そのための準備はしてきたつもりだ。


「もはや引き返すことは叶わぬぞ……」


そうだ。もう戻れないんだ。どんなつもりだったとしても。そうなる前に、君とゆっくり話してみたかったけどね。


「お前さえいなければ、あと一歩で、世界は闇に包まれたのだ……」


人類にとっては、そういうことだろう。僕たちはただ、違う生物というだけだった。確かに小さな争いはあったけど、それは個人的な、食習慣や文化のせいだったはずだ。戦争なんてなかった。民族原理主義者と戦争成金の妄想としてしか。


「勇者よ…私と手を組む気はないか?我々の力をあわせれば、世界を支配するのもたやすいだろう」


僕たちはろくなもんじゃない!戦争が好きだ。魔物を、人間を殺すのが大好きだ。殺す以外何もできないクソ野郎の生き残り。

それが勇者と魔王に祭り上げられた。世界を征服しようなんてしてなかったのに。魔王を倒しても平和なんて訪れないのに。


「世界を征服した暁には、世界の半分をお前にやろう……」


善と悪。敵と味方。僕たちと君たち。人間と魔物。

世界をはんぶんこして、はんぶんこして、はんぶんこして、それでどうするんだろう!

魔物を敵と思っていれば、人類は一つでいられるんだろうね。人類を敵と思っていれば、魔物は社会を作れたんだろうね。


「従う気はないか……ならば、貴様はここで終わりだ」


でも、ここで終わりだ。

僕は必然性を用意した。環境に適応しただけの生体分布を、君がレベルアップする階段にみせかけた。ただのガラクタに、戦術的な意味を与えた。

戦争があることにしたかった奴らは、戦争に似せた命令に喜んで従った。致命的に間違った戦略に基づいていても。そして、たくさんの犠牲と共に、奴ら戦争中毒はみんな死んでいった。


「さあ、これで終わりだ!かかってくるがいい……」



さあ、これで終わらせよう。この間違ったはんぶんこの憎しみあいを。あとは君と僕だけ。

世界はまた混沌に戻るんだ。バランスの悪いはんぶんこが、相容れない世界に戻るんだ。

そんな世界はめちゃくちゃかもしれないけど。この戦争を終わらせるために。僕たちが分かりあえる可能性のために。

お互いのはんぶんこを背負った君と僕で。

オーブを掲げて。剣を握って。呪文を唱えて。

勇者よ。魔王を殺せ。殺してくれ。




なんて魔王である僕は語りかけたけど、唸りをあげて低空を滞空するヴァギナはつまらなそうにあくびをするだけだった。

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